何もしていないのに、突然心臓がドキドキする。

座っているだけなのに、胸がざわざわする。

夜、布団に入ると自分の心臓の音が気になって、なかなか眠れない。


そんな経験はありませんか?


「心臓が悪いのかな?」

心配になって病院を受診したけれど、検査では特に異常が見つからなかった。

「異常はありません」と言われて安心する一方で、動悸は続いている。


「じゃあ、このドキドキは何なんだろう?」

そんなふうに、不安を感じている方もいるかもしれません。


動悸は、必ずしも心臓の病気だけで起こるものではありません。

ストレスや睡眠不足、更年期のホルモン変化など、さまざまな要因が関係することがあります。


今回は、動悸が起こる原因や、漢方ではどのように考えるのか、日常生活でできることについてお話しします。



そもそも「動悸」ってどんな症状?


動悸とは、普段はあまり意識しない心臓の拍動を、強く、速く、あるいは不規則に感じることをいいます。

例えば、こんな感覚です。


  • 心臓がドキドキと速く打つ

  • 胸がドクンと大きく脈打つ

  • 脈が飛ぶように感じる

  • 胸のあたりがざわざわする

  • 寝る前や静かにしているときに、心臓の音が気になる


動悸の感じ方は、人によってさまざまです。

また、動悸を感じているからといって、必ずしも脈が速くなっているとは限りません。


反対に、実際に脈が速くなったり、不規則になったりしている場合もあります。

大切なのは、どんなときに、どのような動悸が起こっているのかを知ることです。



動悸が起こる原因は、心臓だけではありません


動悸というと、まず心臓の病気を思い浮かべる方が多いかもしれません。

もちろん、不整脈などの心臓の病気が原因になることもあります。


一方で、心臓以外の要因が関係している場合もあります。


① ストレスや緊張、自律神経の変化


緊張したときや不安を感じたとき、心臓がドキドキした経験はありませんか?

私たちの心拍数は、自律神経によって調節されています。

緊張やストレスがかかると、交感神経の働きが高まり、心拍数が増えたり、心臓の拍動を強く感じたりすることがあります。


また、睡眠不足や疲労が重なっているときに、動悸が気になりやすくなる方もいます。

ただし、ストレスがあるからといって、動悸の原因が必ず自律神経にあるとは限りません。


② 更年期のホルモン変化


40代から50代の女性では、更年期に伴う女性ホルモンの変化が、動悸に関係することがあります。

更年期には、ほてりや発汗、眠りの浅さ、気分の変化など、さまざまな症状が現れることがあります。

その中のひとつとして、動悸を感じる方もいます。


「顔が急に熱くなると、心臓もドキドキする」

「夜中に目が覚めたとき、胸がざわざわする」


そんな症状が重なることもあります。

ただし、更年期の年代だからといって、動悸をすべてホルモンの変化で説明することはできません。


③ 貧血や甲状腺の病気など


動悸は、貧血や甲状腺機能亢進症などによって起こる場合もあります。

貧血では、動悸のほかに息切れや疲れやすさ、めまいなどが現れることがあります。

甲状腺機能亢進症では、動悸に加えて、汗をかきやすい、手が震える、体重が減るといった症状が見られることもあります。


また、カフェインやアルコール、服用している薬などが関係する場合もあります。

動悸の原因はさまざまだからこそ、必要に応じて医療機関で確認することが大切です。


検査で異常がないのに、どうして動悸がするの?


病院で心電図を取ったけれど、異常は見つからなかった。

そんな経験がある方もいるかもしれません。


ここで知っておきたいのは、検査で異常が見つからなかったことと、動悸の原因がないことは同じではないということです。


例えば、不整脈の中には、症状が出ているときにしか心電図に変化が現れないものもあります。

検査を受けたときには症状が出ておらず、異常を確認できない場合もあるのです。

そのため、動悸が繰り返し起こる場合には、長時間心電図を記録する検査などが必要になることもあります。


一方で、検査を重ねても明らかな異常が見つからず、ストレスや睡眠、ホルモン変化などが関係していると考えられる場合もあります。

「検査では異常がないのだから、気にしすぎ」

そう片づけてしまうのではなく、症状が続くときは、どんな状況で起こるのかを整理しながら、医師と相談していくことが大切です。



漢方では、動悸をどう考える?


漢方では、動悸という症状だけでなく、眠りや疲れ、気分、冷え、胃腸の状態なども含めて、体全体のバランスを考えます。

同じように動悸を感じていても、疲れやすい方、不安感が強い方、ほてりが気になる方など、その背景はさまざまです。

中医学では、こうした違いを「気」「血」「陰」などの考え方から捉えることがあります。


① 「気」や「血」の不足が関係すると考える場合


中医学では、「気」は体の働きを支えるエネルギー、「血」は体に栄養や潤いを届けるものと考えます。

疲れやすい、息切れしやすい、顔色がすぐれない、眠りが浅いといった症状が動悸と重なる場合には、

「気」や「血」の不足という視点から体質を考えることがあります。


ただし、中医学でいう「血」の不足と、西洋医学で診断する貧血は同じものではありません。

貧血が疑われる場合には、血液検査などで確認することが大切です。


② 「気」のめぐりが滞っていると考える場合


ストレスや緊張が続くと、胸がつかえるように感じたり、ため息が増えたりすることがあります。

中医学では、こうした状態を「気」のめぐりという視点から考える場合があります。


イライラや不安感、胸のつかえなどが動悸と重なっているときには、気持ちの状態や日々の過ごし方も含めて体質を考えていきます。

もちろん、胸の違和感がある場合には、まず心臓などの病気が関係していないかを確認することが大切です。


③ 体を潤す「陰」が不足していると考える場合


中医学には、体を温め、活動を支える「陽」と、体を潤し、熱を落ち着かせる「陰」という考え方があります。

「陰」が不足すると、ほてりや寝汗、口の乾燥、眠りの浅さなどが現れると考えられています。

更年期の女性で、動悸とともに顔のほてりや寝汗などが気になる場合には、こうした視点から体質を考えることもあります。


ただし、ほてりや動悸があるからといって、必ず「陰」が不足しているわけではありません。

漢方では、動悸というひとつの症状だけで判断するのではなく、その人の体に現れているサインを丁寧に見ていきます。


また、漢方薬は心臓の病気の検査や治療に代わるものではありません。

原因に応じた医療を受けながら、体質や生活習慣の面からできることを考えることが大切です。



動悸が気になるとき、日常生活でできること


動悸が気になるときは、原因を確認することが第一ですが、日常生活を振り返ることも役立ちます。


① 動悸が起こるタイミングを記録する


動悸は、診察のときには症状が出ていないこともあります。

いつ、何をしているときに起こったのか、どのくらい続いたのかを簡単に記録しておくと、医療機関で相談するときにも役立ちます。


例えば、寝る前なのか、食後なのか、運動中なのか。

脈が速く感じるのか、不規則に感じるのか。

めまいや息苦しさなど、ほかの症状があったかどうかも大切な情報です。


② カフェインやアルコールの取り方を見直す


コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェイン、アルコールなどが動悸に関係する場合があります。

普段よく飲んでいる方は、量や飲む時間を振り返ってみましょう。

ただし、これらを控えれば必ず動悸が改善するというわけではありません。


③ 睡眠や休息を大切にする


忙しい毎日が続くと、睡眠や休息が後回しになってしまうことがあります。

睡眠不足や疲労が動悸のきっかけになっている場合には、休息を取ることも大切です。

寝る前は刺激の強い活動を控え、できるだけゆったり過ごせる時間をつくってみましょう。


④ 無理に我慢しない


動悸が続くときは、「気のせいかもしれない」と我慢せず、医療機関に相談しましょう。

特に、動悸とともに胸の痛みや強い息苦しさ、失神などがある場合は、緊急の対応が必要になることがあります。


そのような症状があるときは、すぐに救急車を呼ぶなど、速やかに医療機関につながってください。

また、症状が短時間で治まる場合でも、繰り返す動悸や、以前と違う動悸がある場合には、循環器内科などで相談することが大切です。



「異常なし」と言われても、つらさを我慢しないで


突然、胸がドキドキする。

原因がわからないまま症状が続くと、「また起こったらどうしよう」と不安になってしまうこともありますよね。


検査で異常が見つからなかったことは、ひとつの安心材料です。

でも、症状が続いているなら、そのつらさまでなかったことにする必要はありません。


動悸にはさまざまな原因があり、必要に応じて検査や治療を受けることが大切です。

そのうえで、睡眠や疲れ、ストレス、冷え、ほてりなど、体全体の状態に目を向けてみることも、今の自分を知る手がかりになります。


漢方なでしこでは、ひとつの症状だけでなく、お一人おひとりの体質や日々の過ごし方も大切にしながら、お話を伺っています。

西洋医学と漢方、それぞれの視点を活かしながら、自分に合った方法を考えていけたらと思います。


「検査では異常がなかったから、我慢するしかない」

そう諦めてしまう前に、まずは自分の体の声に耳を傾けてみませんか?


「これくらい大丈夫」と我慢を重ねず、安心して毎日を過ごすための一歩を、一緒に考えていきましょう。


茶 注ぐ

漢方なでしこのこだわり
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Message 薬剤師/臨床漢方カウンセラー 山根 生子


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