「手足は冷たいのに、顔だけが熱くなる」

「足元は冷えるのに、顔はほてって汗をかく」

「寒いから厚着をすると、今度は上半身が暑くなってしまう」


そんな経験はありませんか?


冷え性というと、手足が冷たく、体全体が寒いイメージがあるかもしれません。

でも実は、体の一部は冷えているのに、別の部分は熱く感じるという方もいます。

こうした状態は、一般に「冷えのぼせ」と呼ばれています。


特に更年期の女性では、顔のほてりや発汗などが気になることもありますが、冷えのぼせは更年期だけに起こるものではありません。


「冷えているの? それとも暑いの?」


自分でもよくわからなくなってしまうような、この不思議な感覚。

今回は、冷えのぼせが起こる背景や、漢方ではどのように考えるのか、毎日の暮らしでできる工夫についてお話しします。



冷えのぼせって、どんな状態?


冷えのぼせは、手足や下半身などに冷えを感じる一方で、顔や頭、上半身にはほてりや熱さを感じる状態を指す言葉です。

例えば、こんなことはありませんか?


  • 足先が冷たくて、靴下が手放せない

  • 顔だけがカーッと熱くなる

  • 暖房の効いた部屋に入ると、顔がほてる

  • 寒いのに、首から上だけ汗をかく

  • 布団に入ると足は冷たいのに、顔は暑い


冷えとほてりが同時にあるため、服装や室温の調節が難しいと感じる方もいます。

ただし、冷えのぼせはひとつの病名ではありません。


血管の収縮や拡張、自律神経の働き、女性ホルモンの変化など、さまざまな要因が関係している可能性があります。

また、甲状腺の病気など、別の原因によってほてりや発汗が起こる場合もあります。



更年期になると、冷えのぼせが起こりやすい?


40代から50代にかけて、女性ホルモンの分泌は大きく変化します。

女性ホルモンの変動は、体温調節に関わる働きにも影響するため、突然顔が熱くなったり、

汗が出たりする「ホットフラッシュ」が起こることがあります。


一方で、もともと手足の冷えを感じやすい方もいます。

そのため、手足は冷たいのに、顔はほてるという状態が重なることもあるのです。


ただし、顔がほてるからといって、必ず更年期が原因とは限りません。

動悸や強い発汗、体重の変化など、ほかにも気になる症状がある場合は、医療機関で原因を確認することも大切です。



漢方では、冷えのぼせをどう考える?


漢方では、冷えやほてりを単独の症状として見るだけでなく、体全体のバランスや、ほかに現れている症状も含めて考えます。

同じ冷えのぼせでも、疲れやすい方、イライラしやすい方、乾燥が気になる方など、体の状態はさまざまです。

そのため、冷えのぼせだからといって、誰にでも同じ漢方薬が合うわけではありません。


① 気や血のめぐりが滞っているタイプ


中医学では、「気」は体の働きを支えるエネルギー、「血」は体に栄養や潤いを届けるものと考えます。

これらのめぐりが滞ると、体の一部に冷えを感じたり、別の部分にほてりを感じたりすると考えることがあります。


例えば、冷えのぼせに加えて、肩こりや頭痛、イライラ、生理に関する不調などが気になる場合には、

気や血のめぐりという視点から体質を考えることがあります。


ただし、こうした症状があるからといって、必ずめぐりが悪いと決まるわけではありません。


② 体を潤す力が不足しているタイプ


中医学には、体を温め、活動を支える「陽」と、体を潤し、熱を落ち着かせる「陰」という考え方があります。

「陰」が不足すると、体の熱をうまく落ち着かせられず、ほてりや寝汗、口や喉の乾燥などが現れると考えられています。


こうした状態を「陰虚(いんきょ)」と呼びます。


更年期のほてりを考える際にも使われる視点のひとつですが、ほてりがあれば必ず陰虚というわけではありません。

また、陰虚によるほてりと、手足の冷えが同時にある場合も、ほかの症状を含めた見極めが必要です。


③ 体を温める働きが弱っているタイプ


反対に、体を温める「陽」の働きが不足していると考える場合もあります。

手足や下半身が冷えやすい、疲れやすい、温かいものを好むといった症状が、体質を考える手がかりになります。


ただし、顔のほてりがある場合には、単純に温めることが適しているとは限りません。

冷えがあるから温める、ほてりがあるから冷やす。それだけでは判断できないのが、冷えのぼせの難しいところです。


漢方では、どこが冷えているのか、いつほてるのか、どんな症状が一緒に現れているのかを丁寧に見ていきます。



冷えのぼせが気になるとき、日常生活でできること


冷えのぼせが気になるときは、無理に体を温めたり冷やしたりするのではなく、自分が心地よく過ごせる方法を探してみましょう。


① 服装で温度調節をしやすくする


寒いからといって厚着をしすぎると、顔のほてりや発汗がつらくなることがあります。

カーディガンやストールなど、脱ぎ着しやすいものを取り入れると、体感に合わせて調節しやすくなります。

足元の冷えが気になる場合は、靴下やひざ掛けなどを使いながら、上半身は暑くなりすぎないように工夫してみましょう。


② 温めすぎないことも大切


冷え性だからと、熱いお風呂に長く入ったり、辛いものをたくさん食べたりしていませんか?

温めることで心地よくなる方もいますが、ほてりが強い方では、かえってつらく感じることもあります。


入浴は無理のない温度で、気持ちよく過ごせる範囲にしましょう。

冷えが気になるときほど、「温めれば温めるほどいい」と考えず、自分の体の反応を確かめることが大切です。


③ ほてりが起こるタイミングを振り返る


顔がほてるのは、どんなときでしょうか?

暖房の効いた部屋に入ったとき、食事のあと、緊張したとき、寝る前など、人によって違いがあります。

睡眠不足やストレス、飲酒、辛い食事などが、ほてりのきっかけになる場合もあります。

どんな場面で起こりやすいのかを知ることで、自分に合った対策を考えやすくなります。


④ 睡眠や休息も大切にする


冷えのぼせが気になる方の中には、眠りが浅い、疲れが取れない、気持ちが落ち着かないといった不調を感じている方もいます。

忙しい毎日では、つい自分のことを後回しにしてしまいがちです。

まずは、無理のない範囲で睡眠や休息の時間を確保することも大切にしてみましょう。



こんなときは医療機関に相談を


冷えやほてりは、ホルモンの変化や生活習慣だけでなく、病気が関係している場合もあります。

ほてりや発汗が強く日常生活に支障が出ている、動悸や体重減少などを伴う、症状が急に現れたといった場合は、

医療機関で相談しましょう。


更年期症状が気になる場合は婦人科、原因がはっきりしない場合は内科などで相談できます。

また、冷えやほてりがあっても、すべてが漢方で対応できるわけではありません。

必要な検査や治療を受けながら、体質や日常生活の面からできることを考えていくことも大切です。



冷えているのに、ほてる。そんな体のサインにも耳を傾けて


手足は冷たいのに、顔だけが熱い。

冷え性なのか、暑がりなのか、自分でもよくわからない。

そんな状態が続くと、どう対処したらいいのか迷ってしまいますよね。


でも、体の感じ方は人それぞれです。

同じ「冷え性」という言葉で表されていても、冷える場所や時間帯、ほかに現れている症状は違います。


漢方では、そんな一人ひとりの違いを大切にしています。

漢方なでしこでも、冷えやほてりだけでなく、睡眠や疲れ、胃腸の状態、日々の過ごし方などを伺いながら、

今の体の状態を一緒に考えています。


「冷えているから、とにかく温めなくちゃ」

そう思う前に、まずは自分の体がどんなサインを出しているのか、少し耳を傾けてみませんか?


自分の体を知ることが、心地よく過ごすための第一歩になるかもしれません。


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Message 薬剤師/臨床漢方カウンセラー 山根 生子


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